社内研修の資料に著作権は発生する?よくある疑問や注意点を解説
社内資料の作成には、内容やデザインだけでなく、著作権に関する配慮も必要です。
特に他人の作成した資料などを使用する場合や生成AIを活用する際には、正しい知識と対応が求められます。
こうした権利や法令を遵守できていないと、損害賠償を求められることや場合によっては刑事責任が生じてしまうこともあるため事前に理解を深めておくことが重要です。
この記事では、社内資料作成に関する著作権の基本事項について、著作権に関する疑問やリスクを軽減するためには、どのような点に注意すべきか、詳しく解説します。
社内研修の資料作りで気をつけるべき著作権とは
社内研修の資料作りにおいて、著作権の取り扱いは重要なポイントです。
特にインターネット上から得た素材や他者の著作物を使用する場合、適切な対応が求められます。
著作権を正しく理解し、無意識に侵害してしまわないようにすることが、企業のリスク管理にも繋がります。
著作権とは
著作権とは、創作した著作物を保護するために著作者に与えられる権利です。
著作物とは、小説、音楽、絵画、写真、プログラムなど、創作性のある表現を指し、その作者に対して保護されます。
著作権は、著作者が自身の作品を無断で使用されないように保護し、使用者から適切な報酬を得るための権利という側面も有しています。
また、著作権は創作と同時に自動的に発生するものであり、特別な手続きが不要という特徴もあります。
著作権の侵害で生じるリスク
著作権を侵害すると、法的なリスクや企業の信用に重大な影響を与える可能性があります。
たとえば、無断で著作物を使用した場合、著作者から訴訟を起こされると、場合によっては損害賠償の支払いが求められることがあります。
また、企業の従業員として作成したものが著作権を侵害している場合は、企業のブランドイメージや信頼が低下する恐れもあります。
さらに、社員や顧客からの信頼喪失や内部規定に違反した場合の処分など、社内における問題も生じる可能性があります。
したがって、著作権を尊重し、資料作成において適切な確認と許可を得ることが重要です。
社内研修の資料には著作権が発生する?
社内研修の資料にも、著作権が発生する場合があります。
ここではそんな社内資料の作成において留意すべき著作権について解説します。
独創的な表現がある限り著作権が発生する場合がある
著作権法では、独創的な表現が施されたものには、自動的に著作権が発生します。
社内研修の資料も例外ではありません。
例えば、オリジナルの文章、図表、スライドなどが独自のアイデアや構成に基づいて作成されている場合であれば、それらは著作物とみなされ著作権の保護対象となる可能性が高いです。
著作権は、登録や申請を行わなくても、創作と同時に自動的に発生するため、特定の形式を問わず、創造的な要素があれば法的に保護を受けることが可能です。
著作権は会社に帰属する場合も
通常、従業員が業務として作成した資料については、その著作権は会社に帰属することが一般的です。
これは「職務著作」と呼ばれ、従業員が雇用関係の中で業務として作成した著作物に対する権利が会社に移転するというものです。
したがって、社内研修の資料も、会社の業務として作成された場合には、その著作権は会社にある可能性が高いです。
具体的な著作権の帰属については、就業規則や雇用契約書で明記されている場合もあるため、事前にこれらを確認しておくことが重要です。
社内研修は「私的利用」に当たらない可能性が高い
著作権法の中で著作物を使う方法として、「私的利用」が挙げられます。
私的利用とは、個人や家庭内など限られた範囲での利用を指し、著作物の無断使用が一部認められるケースです。
しかし、社内研修はその目的や対象が組織全体に向けられているため、私的利用には該当しないことが考えられます。
社内研修資料を作成し、他者に配布する行為は、家庭内の範囲を超えるため、私的利用の例外として著作権法の適用外となります。
このため、社内で使用する資料であっても、著作権の取り扱いには注意が必要です。
ネット上の画像や資料を引用しても良い?
ネット上の画像や資料を引用する際は、著作権に十分配慮する必要があります。
特に引用のルールに従わなければ、著作権侵害として法的なリスクを伴う可能性があります。
ここでは、そんな引用の条件や注意点を詳しく解説します。
改変して利用することは複製権の侵害と見做されることも
改変して他者の著作物を利用することも、著作権法上の複製権の侵害とみなされることがあります。
複製権とは、著作物を無断でコピーする権利を保護するものです。
著作物の内容や形式を変更して使用する場合でも、その行為が著作権者の許可なしに行われると、違法となる可能性があるため注意が必要です。
引用には4つの条件がある
「引用」としての使い方であれば著作権のある資料であっても利用できると考える方もいるかもしれません。
しかし、引用は特定の条件を満たしていないと認められない場合があります。
引用について文化庁では以下のような条件を定めています。
必然性
他者の著作物を引用する際には、必然性が求められます。
つまり、その引用が記事や資料の内容を補完するために必要であるかどうかが判断基準となることが多いようです。
例えば、単にデザインや装飾のためにネット上の画像を使う場合の必然性は認められない可能性が大いにあります。
しかし、具体的な議論や説得猟区の強化をするために外部データや引用文が必要であれば、正当な引用として認められる可能性が高くなるでしょう。
引用する際は、その理由や目的を明確にすることが重要です。
明確な区別
引用部分と自分のオリジナルコンテンツは、視覚的に明確に区別されていなければなりません。
引用部分を「かぎ括弧」で囲んだり、引用元を明示するなどして、読者が一目で引用であると分かるようにしましょう。
オウンドメディアとして、ブログやウェブ記事として資料を公開することも検討している場合には、HTMLのblockquoteタグを使用することも有効です。
このタグは一般的に引用元の出典やソース元を明記するために用いられていることから、SEO対策としても有用とされるコンテンツの信頼性や権威性の向上にも寄与するでしょう。
この区別が不十分だと、他者の著作物を自分のものと誤認される可能性があり、著作権侵害と見なされるリスクが高まってしまうことがあります。
主従関係
引用を行う際には、自分の著作物が主体であり、引用部分が従属する立場でなければなりません。
つまり、引用部分は自分の意見や主張を補強するために使用されるものであり、全体の中でメインとしてのコンテンツはあくまで自分の創作物である必要があります。
もし、引用部分が記事や資料の大半を占めてしまう場合、それは引用とは認められず、単なる盗用と見なされる可能性があります。
出所の明示
引用した著作物の出所を明確に記載することも、著作権法における重要な要件です。
出所の明示は、引用元の信頼性を示すとともに、読者に対して適切に引用が行われたことを証明する手段となります。
書籍であれば著者名や出版年、ウェブ記事ならURLなどを記載し、出所をはっきりと示すことが求められます。
出所の明示が不十分だと、意図せず著作権侵害と見なされる可能性があるため、正確に記載するよう心がけましょう。
著作権を侵害せずに資料作成を行うためには
著作権を侵害せずに資料を作成するためには、適切なルールと手順を守ることが大切です。
以下に、具体的な対策を挙げて説明します。
他者の著作物を無断で使用しない
他者の著作物を利用する際には、無断使用を避け、直接著作者から許諾を得ることが理想的です。
許可を得ることが難しい場合、引用を行う際は、著作権法のルールに従って、引用元を明示し、引用部分を明確に区別しましょう。
また、引用範囲は「必要最小限」に留める必要があり、引用が全体の補足に過ぎないことが重要です。
正しい引用のルールを守ることで、著作権侵害のリスクを大幅に低減できます。
フリー素材やライセンスの明確なコンテンツを使用
フリー素材やクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)で提供されているコンテンツを利用することも効果的な方法です。
これらの素材は、一定の条件下で自由に利用できますが、商用利用の可否や特定の使用条件が付帯することもあります。
そのため、事前にライセンス内容を十分に確認することが必要です。
利用する前に、コンテンツのライセンス条件や制約事項をしっかり把握し、それに従って使用するようにしましょう。
また、場合によっては規約や利用条件を読んでも自身で判断が難しい場合もあるのではないでしょうか。
このようなケースでは、サイト運営者やコンテンツの管理者へ直接、問い合わせを行うなどの手段もリスク低減に有効な行動と言えるでしょう。
資料に関する著作権リスクの相談
社内やクライアント向けに大量の資料を作成する場合や、地震や周囲の意見では判断がつかない場合は、法務部や知的財産権を管理する部署に事前に確認することが重要です。
専門的な視点で著作権リスクをチェックしてもらうことで、万が一のトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、商用利用や大規模な資料の配布を予定している場合は、こうした事前確認を行うことで、安心して資料を活用することが可能です。
社内資料の資料に関わる著作権でよくある疑問
著作権に関する疑問は、特に社内での資料作成や共有の場面で多く発生します。
以下に、よくある著作権に関する疑問とその対処方法を紹介します。
生成AIの出力したものが著作権を侵害していないか不安
近年では、プレゼンテーション資料を生成AIを活用して作成することも増えています。
実際に生成AIを使ったことのある方も多いと思いますが、「生成AIによる出力が著作権を侵害していないのだろうか」と不安に考えたことはないでしょうか。
まず、利用するAIツールの利用規約を確認し、出力された結果に対して著作権がどのように扱われるかを確認を行うことが重要です。
また、インターネット上の盗用チェックツールを使って、文章が他の著作物と一致していないかを確認したり、ブラウザの逆画像検索機能を使って画像が既存の著作物と類似していないかをチェックすることも効果的です。
これにより、生成AIを用いて作成した資料が無意識のうちに他者の著作権を侵害するリスクを軽減できます。
自分の資料が勝手に使われているかもしれない場合
自分が作成した資料やコンテンツが無断で他者に使用されているかもしれない場合は、いくつかの方法で確認することが可能です。
まず、特徴的なフレーズや画像を逆検索し、インターネット上に同じ内容が使用されているかを確認します。
さらに、資料の無断使用が疑われる場合は、スクリーンショットやアーカイブサービス(例: Wayback Machine)を利用して証拠を収集することを検討しましょう。
もし無断使用が確認された場合、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく削除依頼を行ったり、国内プラットフォームであれば、適切なフォームを通じて削除依頼を提出することが可能です。
適切な対応をとることで、著作権が侵害されることやさらなる被害の拡大を防ぐことができるでしょう。
まとめ
社内資料の作成において、著作権の取り扱いは非常に重要です。
特に、社内資料の用途は著作権の例外である「私的利用」として認められないケースが多いため注意が必要です。
他者の著作物を無断で使用しないこと、正しい引用ルールを守ること、そして生成AIの出力物にも著作権のリスクがあることを理解し、慎重に対応する必要があります。
フリー素材やライセンスの明確なコンテンツを利用する場合でも、その利用条件を確認し、万が一に備えて法務部や専門家に相談することがおすすめです。
これらの基本的な対策を守ることで、著作権侵害のリスクを避け、安心して質の高い資料作成を行うことができるように意識しましょう。
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